なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注20

公開: 2021年4月25日

更新: 2021年5月24日

注20. 人材派遣業と労働者派遣

1986年まで、日本社会では、労働者を雇用して、別の企業に派遣することは許されていなかった。これは、国が労働者の権利を守るために作った法律による規制であった。社会人の労働者や学生に対して、就職先の企業を紹介できるのは、労働者に対しては職業安定所、学生に対しては大学等の学校のみであった。企業は、職業安定所や学校宛に、求人票を送ることができる。

1986年、政府はそれまでの方針を変えて、一部の業種に限り、この法的規制を緩和する労働者派遣法を、産業界からの強い要請を受けて施行した。ただし、認められる業種は特別な技能を要する13業種に限定されていた。この13業種については、就業する労働者の斡旋を、職業安定所や学校以外の民間組織に委託できるようになった。

1996年、政府は人件費の高騰に悩んでいた産業界からの強い要請を受け、労働者派遣法を改正し、対象業務を26業務に拡大した。これによって、SE業務なども派遣の対象となった。

SEなどの労働者の派遣を行う人材派遣業は、SE人材を必要としている企業からの依頼を受け、その依頼企業へ、必要な数のSEを派遣する。これは、派遣を依頼する企業が、正社員を雇用せずに、一時的に派遣会社から派遣される労働者を充当して、受注した仕事を行うのに必要な労働者を投入して、契約を遂行することを可能にする。

1990年代の終わりごろから、SE人材の派遣を主たる業務とする企業が数多く誕生し、IT産業における人材不足を解消するために利用された。しかし、SE人材派遣業を専門とする企業に雇用されている労働者は、派遣先の企業に特有な個別の技能の習得が難しいため、長期的に見ると業務経験が身につきにくく、担当する業務にほとんど違いがないにもかかわらず、受け入れ側の企業の正規社員との給与格差は解消しない。

参考になる読み物

新しい労働社会、濱口桂一郎、岩波新書、2009